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Romance夢紀行

Romance夢紀行

A Shiver of Light/ローレル・K・ハミルトン あらすじ


A Shiver of Light【電子書籍】[ Laurell K. Hamilton ]
※ ※ ※ ネタバレあります ※ ※ ※ 
辞書で確認せず、記憶に頼っててきとーに書きなぐっていますので、 内容が間違っていても笑って読み流せる方だけ読んでくださいね 。

メリーは夢を見ています。砂漠で大きなお腹を抱えて、不安定な足元で、自分は夢を見ていることはわかっていて、女神は子供たちを危うくするようなことはなさらないだろうと思っていると、そこに瀕死の兵士の女性が現れます。彼女は敵方の兵士たちに襲撃を受けていますが、相手が子供だったために一瞬躊躇したことで仲間が殺害されてしまい、自分も怪我を負いますが、相手にも反撃し、殺害します。兵士の彼女がメリーの癒しの爪を通してメリーを呼び出したようです。

メリーが彼女のもとに駆け寄ると、かなり重症のようです。彼女のことは以前、女神の力を借りて癒したことがあったものの、メリー自身には癒しの力はありません。また兵士自身は爪を握ることで自分のことも他の兵士のことも癒せるはずですが、子供を撃ち殺してしまったことに良心が痛んでいるようで自分を治そうとしません。

メリーは女神に助けを求めると、女神がそばにやってきてくれます。不思議なことにその人物のことを兵士はおばあちゃんと呼んで、おばあちゃんの説得で自分を治すことに同意します。助けがやってくる気配がしたので、メリーはその場を離れることにします。

目が覚めると、メリーは怪我をしていないのに、看護したときについた血で衣類が汚れていました。

検診のため、メリーは子供の父親たちと病院に出掛け担当医の先生たちと面談しますが、前回の医師陣にさらに新しいメンバーが加わっていて、メリーは警戒心を抱きます。検査の過程でお腹の子供たちは2人ではなく3人ということがわかったようです。前回の検査では、医師たちは心臓に雑音が聞こえていて心臓に問題がある子供なのではないかという疑いを持っていたようですが、実は3人目の赤ちゃんの心臓音が機械には捉えられていたようです。エコーで大きめの赤ちゃん二人が、もう一人の赤ちゃんの姿をかこむ花びらのようにいるのが見えました。

メリーは妊娠8か月になり、もうしばらく自分の足先をみたこともなく、靴紐も結べなくなっていて、車の運転もできず、お腹の中には自分ではない存在が動き回っていて、妊娠状態に飽き飽きといったかんじ。新しいメンバーの医師がどういう意味で同席しているのかぴりぴりしています。座っていてどの姿勢になっても背中に痛みが走り、左右に座っているドールとフロストは片手はメリーの手を握り、もう片方の手ではそれぞれが両側からメリーの背中側に手を伸ばしさすってあげています。

新しい医師は、赤ちゃんをできるだけお腹の中に長くいさせることが専門の医師のようです。医師陣のアドバイスとしては、メリー本人は普通分娩が希望ということはわかっているけれど、帝王切開にしないとリスクが大きするということで、大きいほうの双子をさきに帝王切開で取り出し、一度閉じてから、最後の一人はぎりぎりまでお腹の中で育ててあげたほうがよいという判断のようです。メリーは双子のはずが三つ子という知らせを受け止めきれておらず、さらにこのタイミングまで三つ子ということがわからなかった医師陣にも不安を抱いてもいて、三つ子なのに誕生日が数日以上違うということ!?と担当医に糺しますが、その場で破水してしまいました。

病室で横になっているメリー。肌が白く、髪の毛は黒く、片耳だけが黒くとがっているアラステアという男の子をドールが抱いています。背中には星印があり、それはドールともお揃いのようです。アラステアよりも大きいのがリースにそっくりの白髪の女の子のグィネヴィア、腕に金色の稲妻の印があり、どうやらミストラルの能力を引き継いでいるようです。そしてもう一人、未成熟な状態で生まれた赤毛の女の子は沢山の管に繋がれ、看護婦さんやお医者様、そしてフロストに見守られています。フロストの亡くなってしまった女の子のroseという名前にしてほしいという希望で、コーンウォール語でbryluenブリー?と名付けます。リースが自分には死の影が見えないから、この子はそのうち元気になる、と宣言します。間違いないか、と言われて、いろいろなものに誓って間違いないと断言します。この子が新生児らしくかぼそく泣く様子をみて、メリーは違和感を感じたので、そばに連れてきてもらいます。抱っこしても他の二人よりも腕なども細く本当に軽く、華奢で具合が悪そうです。背中側を見てみると、虹色のうろこのようになっていますが、スネークゴブリンのようなうろこではなく、どうやら竜のうろこのようです。そしてまるで羽がはえそうなコブが見えます。ナイトフライヤーの色のついていない翼のようになるのかもしれません。メリーは彼女の額に触角をみつけるとすぐに人工的なものを外して頂戴、この子はこのままでは死んでしまう、と言って看護婦さんに外させます。どうやらこの子の父親はキットーとロイヤルのようで、それで月齢が双子たちに比べて満ちていないことも、身体が小さいことも理解できます。メリーは豊穣の女神の血をひいていますが、自分自身どれだけ妊娠しやすいのかということを見くびっていたと考えています。普通は一度妊娠したらそれ以上は妊娠しないはずなのに。裸のブリーを抱っこし、授乳してみると、しっかり飲み始め、グィネヴィアも欲しがったため両側で授乳します。アラステアは哺乳瓶で問題ないようです。

メリーが目覚めるとゲイレンはどちらかの赤ん坊のベビーベッドのそばで眠っていて、リースの胸の上ではグィネヴィアが眠っています。また天然の素材でできたベビーバスケットのなかにはブリーがいてロイヤルとペニーがつきそって眠っているようです。また同じ部屋にはショルトがいて、その近くにはナイトフライヤーたちが黒い影のようにうごめいて、彼らを護衛してくれています。

ショルトは、メリーに他の父親たちのように赤ちゃんとの絆を感じられないと言います。また彼との明らかな血縁をしめす印も。ショルトはスルーアの王ですが、アンシーリーコートのなかでは珍しく民主的に選出されて選ばれる王です。シーにとっては、女神の魔法で変化する前のショルトのおなかの触手は怪物のような忌避する部位でしたが、スルーアたちにとってみると自分たちの一族の印でもあり、赤ちゃんたち3人のなかにはそういった印が見られないので、どの子が自分の子供かわからないし、王としての素質に欠けると民に思われてしまうかもしれないと悩んでいるようです。

ゲイレンとリースが目覚めて、まだ生まれて一日もたっていない赤ん坊を判断しないように、これからどんどん変化するからと彼にアドバイスしてくれます。そして赤ちゃんを抱っこして、お世話をするようにと。ドールのように一目会ったとたんに絆が形成されてしまうこともあれば、ミストラルのように娘に軽い電撃をくらいながらも恐々抱っこしてみることもある、まずショルトにグイネヴィアを抱っこさせてみますが、彼女は好みがうるさく哺乳瓶では満足しません。そうこうするうちに3人とも泣き始めますが、ブリーとアラステアを最初メリーは授乳させていますが、アラステアはそれほど好みがうるさくないとゲイレンがアドバイスし、アラステアとグィネヴィアを交換すると、今度はショルトも授乳させることができます。

ロイヤルがブリーの額にあるのは触角ではなく、もっと固いものだ、と言い出します。角ではないかと。ショルトはその意見を聞いて、角に翼、ナイトフライヤーの印だと喜んで、ブリーを渡してもらってしげしげと観察し、間違いないと確信を抱いたようです。メリーはゴブリンのなかにも角を持つ特徴があるものもいるので言い切れないのではと内心思っていますが、口には出さないでいます。

ナイトフライヤーたちが護衛についていて、ドールはそばにおらず、どことなく漂う緊張感にメリーが何かあるのではと感じます。どうやらドールにはメリーを不安にさせないようにと口止めされているようですが、ロイヤルがオンディーアイスが子供たちに会いたがっているんだとメリーに話します。

またタラニスも彼女の子供は自分のものだから、シーリーコートによこすようにと言ってきているようです。そちらはDNA検査の結果がでて、タラニスの子供ではないことが証明されたら、彼が不妊だということがわかり、王として不適格という烙印が押され、王位を追われたらよいとメリーたちは話しています。

メリーの出産でたくさんのお祝いのお花やおもちゃなどが病室にあふれていますが、退院のために寄付できるものはして、持ち帰らないと失礼な関係のプレゼントは車に積んで、退院の準備をしていると、新しい妖精国の大使が現れます。メリーはシーリーコートとアンシーリーコートとその他のコートの代弁者となってほしいと話すと、大使はシーリーコートとアンシーリーコートの代理ではと考えているようです。ただしメリーが元気になる前に自分でゴブリンたちと交渉するようなことがあると命にかかわることになるから、気を付けるようにと彼に釘を刺します。

ルーシー・テイト警部もテディベア3匹をもってお見舞いに来てくれました。メリーは彼女は友達だから来てくれたと思っていましたが、実際にはメーヴリードの自宅には戻らないで警護された家に移ってほしいという政府の依頼をメリーに引き受けてもらいやすくするために彼女が送られてきたようです。タラニスが攻撃してきたら、人間がいくら守っていても守り切れるものではないといって断ります。

メーヴリードが病室にお見舞いに来ます。新生児室に寄ってから来たの、お祝いが遅くなってしまってごめんなさいと遠慮気味の態度です。メリーは彼女に敵意がないことを示して、お祝いの気持ちを受けます。妖精国の王子や王女がアメリカで生まれることは稀なため、病院の外は押し寄せてきたマスコミで大変な騒ぎになっているようです。ハリウッドの銀幕の女王でマスコミ慣れしているメーヴも驚くほどの騒ぎですが、メリーは貴女を私たち追放者たちの大黒柱にするわけにもいかないし、リアリティショーのカメラを自分たちの家にいれてお金を稼ごうと思う、とメーヴに伝えます。メーヴは前回の映画のギャラもあるし、そんなことまでしなくてもと言いますが、メリーに従います。

自分の甥や姪にあたる赤ちゃんたちに会いたいというオンディーアイスには、メリーの産後の回復に時間がかかるからとドールが時間をかせいだようです。出産から3日後にメーヴ宅で鏡ごしの面会が設定されました。彼らの衣装も女王からの言いがかりをつけさせないために慎重に整えられ、赤ちゃんたちは面会時間までに十分お腹を満たして別室で待機させ、メリーは王配となった近衛兵たちを両脇に従え、足置き台の代わりにキットーが足元に伏せ、カサドゥアが鏡をアンシーリーコートのオンディーアイスにつなぎ、会談が始まります。まずはオンディーアイスが正気をどの程度保っているのかを探り、赤ちゃんたちをあわせてもよいか判断することになっています。

すぐに鏡に現れたオンディーアイス。思いのほか落ち着いた様子で、礼儀正しい挨拶をメリーや周囲の近衛兵たちと交わします。途中で伴侶のエイモンも現れ、オンディーアイスの身体に触れ、彼女を心理的にも支えていることに気付き、メリーが自分が以前思っていたよりもずっとエイモンとオンディーアイスの関係は深いものだったのかと気づきます。そして突然オンディーアイスがドールが自分のことを暗殺しにくるだろうと思っていたのに、なぜ来なかったのかと尋ねます。

オンディーアイスのペットだった人間の若い男の子は先日オンディーアイスが拷問をしすぎて殺してしまったそうです。殺してしまってから寂しくなり後悔している、と話します。そして以前の約束通り、メリーが子供を産んだ、それも期待以上の三つ子を! だから私は退位します、と明言します。

オンディーアイスは落ち着いていたかに見えましたが、メリーのそばにいるドールやフロスト、キットーにも挨拶かたがた脅しをかけ、彼らに緊張が走ります。メリーはただの叔母としてなら赤ちゃんに会わせるけれど、女王として脅しをかけるならば、会わせません。オンディーアイスが来たよ、逃げて! オンディーアイスが来たよ、戦わなくちゃ! そんな風になりたいですか、それとも子供たちと過ごしたいですか。エイモンの説得もあって、オンディーアイスは叔母として子供たちのそばにいたいと言います。メリーは赤ちゃんたちを連れてこさせます。

お前のことは脅威とは思っていなかった、でもお前は私からダークネスを奪い、フロストを奪い、私の脅しの手段のスルーアはお前の配下となり、ゴブリンはお前と契約を結んでいた。いまの私はなにもない、と。父のエスス王子が将来アンシーリーコートを治めるのであれば、治める相手のことを知らなければと自分を育ててくれたのですとメリーは話します。もしもあなたがケル王子に違う風に教育していたら、いまもエスス王子もケル王子も生きていたのにと。

オンディーアイスがメリーのことが嫌いだと言いますが、メリーもあなたのことが嫌いですと言い返します。それならなぜ自分にチャンスを与えるのかというと、昔父のエスス王子が姉のオンディーアイスと幼いころ遊んだ話をして微笑んでいたからと説明します。父が微笑みかける女の子がオンディーアイスのなかにまだいると信じてそうします、というとオンディーアイスが泣き出して鏡の通信を切ってしまいます。

それをみたカサドゥアが、私は貴女の父エススに忠誠を捧げていましたが、彼の娘であるあなたに忠誠を捧げることをお許しください、とひざまずいて申し出ます。私は誰からも忠誠を受けていないし、あなたか私が死ぬまで忠誠を受けるほどの人間でもないと話します。なぜそういう気持ちになったのとメリーが聞くと、カサドゥアはあなたがオンディーアイスを泣かすことができたからと説明します。彼女のことを泣かせることができたのはエスス王子だけでしたと。あなたは優しいかもしれないけれど、敵に情けをかけたところを見たことがありません、エスス王子にもしそれだけの果敢さがあれば・・・と。あなたが、そしてその子供たちが同じように統治してくださるのでしたら、ずっとお仕えしたいですと話します。その場にいた全員がひざまずき、メリーに忠誠を誓います。

そこにメーヴリードの13か月になる息子が赤ちゃん!と言って飛び込んできます。お腹がおおきいメリーにもまとわりついていたようで、赤ちゃんたちにすっかり夢中でリースにもなついていますが、一方で仕事に出かけているメーヴとはうまく関係が築けていないようです。メリーや近衛兵たちも密かに心を痛めていて、家族会議を開かなくてはと考えています。その後幸せに暮らしました、というのは童話ではおしまいですが、実生活では始まりなのです。

エスス王子が亡くなって以来初めて、メリーの夢のなかに父が出てきました。奇妙な違和感があります。父はブリーを抱っこしていますが、髪のなかにある角をみつけ何だこれは!と言い、近寄っていたメリーの腕のなかに落とすように離します。メリーがそばにあるゆりかごに彼女を下すと、今度はアラステアを見て仔犬のような斑点があるのか、といいメリーに返してくるのでそばにあるゆりかごにおろします。今度もメリーが赤ん坊をおろすと姿を消しますが、メリーは夢のような夢ではないようなこの奇妙な雰囲気のなかに赤ん坊を置いておきたくないのでよかったと感じます。今度は父がグイネヴィアを腕に抱き、この子はシーに見える、というので決定的におかしいと思い、幻想でなく本当の姿を現しなさい!と言います。幻想という言葉を口にしたとたん、誰を相手にしているか気が付いたメリー。タラニスの姿に戻った彼に腕を強くつかまれて私と共に来るのだ、と言われますが抵抗し、肉のハンドパワーを使って、彼の腕をめくれあがらせます。夢のなかでの怪我は現実世界に戻ってもそのままなのか、タラニスは夢から覚めたら無傷だと思っているようですが、メリーははっきりしたことはわからないけれど、現実にも症状が続いていたらいいと願っています。そして武器が欲しいと強く願うと父の剣だった魔剣アーベンドールが手の中に現れました。

夢から覚めると手には剣を握っていて、両脇にはドールとフロストがいました。女神の夢をみているときと同じように起こそうとおもっても起きなかったのに、バラの花びらが降ってこないので、どういうことだろうかと心配していたと言います。ドールとフロストはメリーを強く抱きしめますが、メリーは自分をレイプしたタラニスと会ってしまったショックで無防備な気分にはなりたくなく、愛している二人との間にも自分だけの空間を保ちたくて、少し離れてほしいと頼みます。ドールはメリー自身やメリーを愛する人物を傷つける可能性のある間は手を離すことはできませんといい、メリーが剣を握った手を抑え込むことをやめません。フロストは身体をはなし、自分の剣の柄をメリーに差し出し魔剣と交換してください、と頼みます。この場にはその魔剣に触れても無事でいられるのは貴女しかいませんからと言われ、なんとか剣を交換し、二人はベッドにいるメリーから少し距離をとって離れてくれます。聞きにくいことですが、何があったか話してくださいとドールが頼み、彼らを両脇に座らせ、メリーが経緯を説明すると、むかしタラニスは夢を司るシーだったと教えてくれます。そして夢を訪れるだけで相手の女性を妊娠させていたことをドールが思い出し、メリーはぞっとします。タラニスの怪我は現実にも持ち越されるようであれば、タラニスもメリーを脅威に感じるようになるだろうけれども、とにかく赤ちゃんたちの父親の遺伝子の解析結果が待たれます。

赤ちゃんが心配になり、メリーが育児室に様子を見に行くと赤ちゃんたちはそれぞれのベッドですやすや眠っています。キットーが眠らないで赤ちゃんを見守っていたようで、誓っていうけれどこの数時間ずっとここで眠っていたと話します。あなたも眠らなくちゃというと、ゴブリンの社会ではずっとのけ者でいて、自分の庇護者の主人や女主人がいつ自分に飽きたり、その恋人が嫉妬で自分を追い出すかもしれないと思いながら生きてきた。ここが自分の居場所だと感じられるし、本で読んだことのある家族の一員に初めてなれたんだからとキットーは言います。キットーを初めて引き取ってくれた女性が彼に読み方を教えてくれたようで、彼は字が読めない主人や女主人に新聞や本を読んであげたりして役にたっていたようです。メリーはあなたは私たちの一員よ、と言いますがもしゴブリンの王クーラグが俺を呼び戻せば、貴女には引き止めることができないとキットーは暗い顔をします。またゴブリンの双子のアッシュとホリーがメリーと女神の恵みの力を使って決闘をしていると話します。ゴブリンの王は力で勝ち取る権利ですが、どうやらクーラグ自身が戦ったら勝てないかもしれないと思うほど双子は力をつけてきているようです。そして王が暗殺者を雇うことは面目上できなくても裏から実力者に手をまわして双子へ決闘を挑ませることはできるため、決闘はそういう背景があるのではないかと話します。クーラグとの契約はあと数週間で切れ、契約が切れた途端クーラグがこの協力関係から手をひくことは目に見えていますが、一方の双子に契約を申し出るためにはメリーとの肉体関係が必要で、それはメリーの身体のために医師に6週間ほどは禁じられています。ゴブリンとの同盟関係を今後どうするのか判断をいったん保留すると、バラの香りがただよい、花びらが降ってきます。犬たちが育児室のそばまで来ているようで、メリーが入れてあげると、メリーの犬マンゴーとミニーがそばに来て、他にもウルフハウンドやテリア、地獄の番犬ヘルハウンドもやってきて、しっぽをちぎれんばかりに振っていますが赤ちゃんたちを起こさないように静かにしています。さらにクーシーという妖精の丘ができるときに駆けまわるという犬がやってきて育児室をかけまわり、足元から風と芝生が広がっていき、ブリーのところに行きました。フロストと共にはいってきた次の犬は旅人をとって喰うといわれる暗い伝説の主人公でもある犬で、白いたてがみで大きな牙を持つ犬ですが、その犬はグィネヴィアのベッドのところに行きます。そして次に入口から入ってきたのは、馬をも倒せる巨大な犬で、ローマ時代は競技場でライオンとも戦っていた犬です。その後ろから仔犬をつれたドールがやってきて、ドールが仔犬をアラステアのベッドに置くと、大きな犬が誇らしげな顔で仔犬を見つめています。どうやら王女たちの犬は警護のための犬ですが、アラステアの仔犬は親友になるのでしょう、ドールが私たちの息子には犬が必要だ、私たちの息子とフロストに宣言します。フロストも私たちの息子、と繰り返します。アラステアも犬の姿に変化できるようになるかしらとメリーが言うと、様子をみるしかありません、とドールが返します。

2日後、メリーは目覚めるとフロストがメリーをかばって起き上がり、剣先を部屋のすみにあてて警戒しています。ドールはどこ?とメリーが思うと、フロストが警戒していたのが犬に変化して部屋の隅で獰猛にうなっているのがドールでした。どうやらタラニスがドールの夢の中に侵入し、ドールは夢を見ているようで、メリーやフロストのことがわからないようです。フロストは静かに、刺激しないようにドアのほうへと向かい、メリーにドアから出るように、と話します。どうしてよいかわからないメリーはじりじりとドアに向かいますが、騒ぎに気付いたウスナがドア越しに声をかけてきます。ドールがフロストにとびかかってきて、フロストも死に物狂いで殺されないように応戦していますが、銃などで応戦してドールを殺してしまうリスクを負うわけにもいかず、メリーもおろおろするばかりです。別の部屋にいたミストラルがメリーにきわどく当たりそうな雷撃を放ち、ドールの眼を覚まさせて正気に戻すことができました。どうやったらタラニスを自分たちの夢から締め出すことができるのか、誰もよい考えを持っていないようです。

ウスナが治療師のハーフウィンを呼んでくれたようで、フロストの治療にあたってくれますが、ドールの爪でかなり深く傷つけられてしまっていて、フロストはこらえていますが血だらけでかなり痛みがあるようです。ドールがすまない、と謝っていますが、フロストはわざとやったわけではないことはわかっているとドールを許しています。

久しぶりにミストラルに抱きしめられ、彼の欲求に気付いたメリー。ただしミストラルは荒っぽい愛し方が好みのため、久しぶりに愛をかわすならメリーに優しくできるほかの恋人としてからにしてほしいといいます。ドールは、フロストがこんなことになってしまったからには、フロストがメリーと愛を交わせるようになるまで自分は待つ、と言います。

以前メリーがドールやフロストと使っていた主寝室はメーヴリードが帰宅したため彼女に戻し、違う部屋を主寝室にしています。ただフロストをゆっくり休ませるため、メリーはシャワールームがついている少し手狭だけれど西側に面している2面がガラス張りの部屋で休むことにしました。ノックが聞こえて内心迷惑に思うメリーですが、リースとゲイレンがやってきて、彼女のかからに負担がかからないやり方で愛し合いあいと申し出て、メリーは喜んで受け入れます。

3人の寝物語でリースには自慢の息子がいたこと、でも自分自身がしかけた戦争で相手の部族の人間の武器にやられてしまったそうです。リースは復讐のため、一族の最後の子供のひとりまで探し出し駆り立てて殺したそうです。すべての復讐を終えてわかったのは、復讐をしても息子は帰らないということと、戦を始めた自分自身への怒り、そしてリースではない神を信奉していた一族を抹殺してしまったことの代償としてその当時の自分自身の名前や言い伝えや伝説も一切残らないようにしたそうです。

オンディーアイスが鏡で呼び出してきました。黒いパンツスーツで、マスコミに対応するときのようなきちんとした格好をしていて、肌の露出も少なくなっています。そばにいるエイモンもきちんとした服装をしています。おそらく赤ちゃんたちに会わせてもらえるように考えたのではと思い、正しい方向に進んでいるようにメリーは感じますが、まずは心配事から片づけるべく子供抜きで話し合いを始めます。

タラニスがメリーとドールの夢に侵入した件で対応を相談すると、オンディーアイスはシーリーコートの誰かを肉の手でひっくりかえして見せしめにしたらよいと助言してくれます。そこまで恨んでいる人物がシーリーコートには見当たらないとメリーが言うと、個人的恨みがあるかどうかが重要なのではなく、タラニスにメリー自身を恐れさせることが重要なのだと話します。そうでなければ、メリーが女王になったアンシーリーコートを下に見て好き放題するだろうと。

話し合いの場でメリーがドールへの慰めと自分自身のために腕に手を置くと、オンディーアイスはその意味がわからないようです。タラニスがメリーにしたことも、自分自身への侮辱ととらえてはいても、メリーが傷ついたことには思い至らないようです。彼女も、そしてオンディーアイスをそばで支えるエイモンを可哀そうな人だとメリーは感じますが、哀れんでいることがわかったとしたら激怒させるだけなので態度に出すことはできません。言い合いになったところで、本心を話したらどうなのと言われて、メリーがあなたのは相手を脅かすか嬉しくないことをほのめかす以外おことを口にできないのですか、と正直にいうとオンディーアイスはショックをうけて黙ってしまいます。脅すことで自分とアンシーリーコートを守ってきたから、習慣になっているのだと言い訳します。それをきいたゲイレンが、寂しい以外のなにものでもないですねとコメントします。みんな驚いて彼を見ます。もし民があなたを恐れていたら、どうして愛してくれるでしょうかと問いかけます。オンディーアイスは愛ですってと言い、それを聞いていたメリーは内心ゲイレンを止めたくてしょうがありません。ゲイレンはオンディーアイスに尊重してもらえるような技術も地位もないのです。ところがゲイレンが、もしメリーがシーリーコートの一員を肉の手で傷つければマスコミに言いつけ、私たちが怪物のように思えるでしょうし、実際そういうことになるでしょう。でももしリアリティ番組でメリーをタラニスが襲ってきたところ、傷つけているところが撮影されたら、それを利用して彼を殺しても自分たちのイメージダウンにはなりませんし、マスコミの寵児のタラニスは大打撃を受けるでしょうと提言したことでオンディーアイスのゲイレンをみるまなざしが変わります。もしもメリーの赤ちゃんの父親のひとりでなかったら、私の近衛兵に戻ってどれだけあなたがアンシーリーらしいか試してみてもいいわねとオンディーアイスが言って、その場が凍り付きます。メリーはヒステリっくな笑いがこらえきれなくなり笑いだし、ゲイレンも声をあわせて笑いますが、気が付くとその場で笑っているのは二人だけでした。不穏な雰囲気をさっしてレッドキャップやそのほかの近衛兵たちが部屋にはいって警戒態勢を敷きます。

オンディーアイスは私にたてつくことは許さない、父親ではない者たちはアンシーリーコートに戻りなさい、と命じますが、ゴブリンたちは自分たちの帰る場所はアンシーリーコートではないからと命令を拒みます。オンディーアイスとメリーの間にはゴブリンたちやその他の近衛兵たちが立ちふさがり直接見ることができませんが、メリーは彼らはもうあなたのものではないのです、叔母様、と声を掛けます。

ケルの親衛隊は命じられて護衛していただけで、ケルへの誓いを立てていたわけではありません。私への誓いを立てています。オンディーアイスはケルとショーベンは彼女たちが誓いを立てたと言っていたといいますが、カサドゥアがそれは神に誓って嘘ですと証言します。それなら残りの父親ではない近衛兵たちはすべて宮廷に戻りなさいと命じますが、ウスナが私たちはメリーに誓いを捧げていますので、宮廷には戻りませんと宣言します。ウスナは口にしたことで自分自身を危険にさらしていることはわかっていましたが、勇気を振り絞ったようです。激怒した女王はではウスナだけ戻れば他のものはここにいてよいことにしよう、と命令をかえますが、カサドゥアが彼は私との間に子供ができましたと話します。この話し合いの直前に妊娠検査薬を試して陽性だったと話します。この慶事を前に、私たちは罰ではなくお祝いをもってあたらないといけないのでは、叔母様とメリーがとりなします。

愛によってなど統治できない、とオンディーアイスのなかの怪物が顔を出しますが、ゲイレンがメレディスの民への愛がなくてどうして彼らは誓いを捧げたでしょうか、エスス王子のやり方に倣ったのですと話すと、エススの名前を出せばことが収まるとおもったら大間違いとオンディーアイスが怒りますが、今度はドールがエスス王子は貴女とあなたが傷つけようとした相手の間にたびたび割り込み、かばっていました。彼が亡くなるまで、彼の良心とあなたへの影響力の強さをだれも理解していませんでした。エスス王子は亡くなりましたが、真実、彼の高潔さ、優しさ、知性、愛情という意思をついで、彼の娘があなたの前に立っていて、彼の孫は隣の部屋で待っています。彼は正しく寛大な王を育てたのではないでしょうか。

オンディーアイスは涙を流し、お前には2度も泣かされたわ、愛で統治するというならお前の中にはシーリーの明るさしかないのかしらと尋ねたので、メリーは私は血と肉のハンドパワーも持っていますし、ケルをそのパワーで倒しました。父はケルを愛していたがゆえに、命を落としましたね。彼はためらうべきではなかったのです。

私はあなたに愛情だけでなく、公平さと、無慈悲さをもって統治するとお伝えしようと思います。父よりも無慈悲に。あなたは決闘と称した私へのケルやケルの取り巻きの暗殺計画を止めても下さらず、魔法も自分を守るすべもない私をかばってもくださらなかった。生き残るために、私は無慈悲になったのです。もしあなたが父の思い出のために私を守ってくださったなら、今の私はなかったでしょう。父は優しさや名誉、愛情、公平さ、正義を教えてくれました。でもあなたこそが無慈悲と嫌悪を教えてくれたんです。

オンディーアイスはそれを聞いて微笑み、エススと私がシーにぴったりの統治者を作り出すことができたということかしら。タラニスは貴女をおそれるべきね。私はここに宣言します。私の近衛兵たちケルの近衛兵そしてお前に誓いを捧げたものたちを誓いから自由にします。それにお前の母親の育児放棄とタラニスの狂気もお前を今日の女王たらしめる要因になったのではと言い、メリーはそれを認めます。ゲイレン、拷問抜きでも愛は驚くべき効果があるものねと言って鏡の奥へと去っていきました。

メーヴリードは仕事の打ち合わせがあるようで、素敵に装っています。メリーは一緒に育児室に行こうと誘いますが、メーヴはとげとげしい態度です。ヨーロッパでの撮影で何かあったのか、それとも帰国してからの出来事なのか、メリーがずばっと切り込むと息子のライアンがメリーや近衛兵たちになついていることが気になっているようです。またリアリティショーは、自分の女優としての傷にダメージが大きすぎるからやめてほしいと言ってきます。自分はその場の誰よりも美しくなくてはいけないのに、メリーの妖精女王という存在と美しさで自分がかすんでしまい、自分の事務所も、彼女自身も賛成できないと。メリー自身はこの大所帯を支えていくのに、探偵事務所だけの稼ぎでは難しいと話します。それにメーヴが収入のことだけを心配しないでいられるようになれば、ライアンと一緒にいられる時間も長くなって、親子関係にもいい影響があるのではないかと。

育児室に行くと、人間のナニーが赤ちゃんたちの世話をしてくれていて、ライアンもそこにいます。ブリーを抱っこしてくれている女性が呼びかけにも答えないため、ブリーを取り上げ、正気を取り戻させないとなりませんでした。ナニーには人間は雇えないというメリーに人種差別になると否定的だったメーヴも、納得します。生まれて数日なのにすでに大人を思い通りにするブリーの力は驚異的で、自分たちでみるしかないのかもと考え、メリーはひとまずメーヴを育児室に監視のために残して、敵方のシーの女性までも自分を愛するように魅了してしまったアイスリングや父親たちの意見も聞こうとトレーニングルームに足を向けます。

トレーニングルームはリース主導で機械などが導入され、トレーニングのほかに護身術などメリーを守るための訓練をしています。レッドキャップがいたので声をかけると、後ろのほうで彼女はまだ女王というわけでもないのにという陰口が聞こえてきます。シーリーコートから子供が欲しくて移住してきたレディ・フェネラは頭の回転が鈍いようですが、一般的な純血のシー以外を蔑視するタイプのようです。夫のトランサー卿は妻の失言をなんとかフォローしようとしますが、レッドキャップの忠誠心に応えてメリーが触れると頭から血が流れ、それは彼らがメリーを女王とあがめる所以なのですが、それを馬鹿にする発言をしてしまい、メリーが荷物をまとめて海辺の別荘に行きなさいと命じるとあそこは妖精の土地ではないと口答えします。メリー自身が女神に祝福されていて、その祝福をまわりに分けてくれているだけで、シーみんなが祝福されているわけではないとフェネラは思いあがりを正されていましたが、理解できていないようです。メリーのために激怒するリースを抑えつつ、トランサー卿が海辺に行って喜んで迎えていただけるまで戻ってきませんと妻を引きずるようにして出ていきます。一般的なシーの反応とはいえ、失望からメリーは涙を流します。出産後のホルモンの関係かいつもより自分が涙もろくなっているのを感じます。

ゲイレンと共に格闘技の指導をしているドールに会いに行くと、同じ部屋にレッドキャップがいて、メリーに自分の顔があなたの魔法のせいでひどくなったと文句を言われますがレッドキャップのリーダーのジョンティが女王に謝れと命じてその場をおさめますが、メリーはまたもや悲しくなってしまいます。アイスリングがレッドキャップと格闘をして、ひどく顔を痛めつけられたようです。シーの戦士は普通であれば回復力も並みではなく、しばらくたっても顔を抑えたままで立ち直れない様子のため、ゲイレンとメリーは急いでアイスリングの様子を確認しにそばに駆け寄ります。

アイスリングは自分の意思とは関係なく顔をみた人を魅了してしまうため普段はベールをつけていますが、顔を攻撃されたようでベールが外れてしまっています。ゲイレンがそばに寄ってけがの程度を確かめようとしますが、痛みをこらえながら、なんとか自分の顔を隠そうと手で覆い、傷を見せようとしません。ゲイレンは、自分は本当に愛する人がいるから君の魔法は自分には効かないとアイスリングの心配をはねのけ、さらに傷をみようとしてアイスリングの腕ともみ合いになりますが、アイスリングはゲイレンのそばにメリーがいることには気が付いておらず、腕の隙間からメリーと目が会ってしまい凍り付きます。

メリーも自分には愛する人たちがいるから大丈夫と思って近づいていますが、人間の血も混じっているため、人間の部分はアイスリングの魔法に耐えられるだろうかといざとなると怖気づきますが、アイスリングの顔をみると確かに美しいかもしれないけれど、自分にとってはドールやフロスト、父のほうが美しく思えるというのが正直な感想だったようです。

またドールも心配して駆け寄ってきますが、メリーが大丈夫なことを見て取って、我々3人には顔をみせても大丈夫、とアイスリングを安心させます。素顔をみせても大丈夫だったとわかるとアイスリングは大声で泣き始めました。

3人は身を寄せ合い、アイスリングを撫でて慰めをあたえます。衣食が足りている赤ん坊でも、十分な愛情を受けられないと死んでしまうそうです。他人から触れられることに飢えていたアイスリングは、渇望を満たしてもらい、髪をほどいて、撫でてもらってもいいですか?とおずおずと願い出て、3人は喜んで髪をほどいてあげます。

寛いだところで、アイスリングがシーリーコートから王にならないかと数日前誘いが来たと報告されます。どうしてすぐに報告しなかったのかと聞くと、メリーが怒って追い出されるのではないかと不安だったようです。ところがメリーは命に限りのある人間の血が混じる自分が即位すると支配する宮廷にもその要素が含まれるかもしれない可能性は否定できないためシーリーコートの貴族に受け入れられることはないのだから、自分がそうしたいのであれば、即位したらよいと勧めます。アイスリングは驚いたようです。彼はもともとシーリーコートの妖精の力に王として認められたのに、それが理由でタラニスに追放されたという経緯があり、彼自身もいまの自分がシーリーコートに受け入れられるのか自信がないようです。ひとまず他人の前に出られるようにアイスリングは髪を編みなおし、ドールの破れたシャツで顔を隠し、部屋に戻ることにします。アイスリングは喜んでブリーを抱っこして観察してくれます。ブリーの可愛らしい顔を魔力を遮るために隠さなくてはならないのかと不安が膨らむメリーとメーヴですが、アイスリングがブリーの魔力は顔から発せられているものではないので、顔を隠す必要はないと助言され、その点では一安心します。

メリーはショルトに会いに海辺の家へ行きます。FBIから護衛が2名派遣されてきていて彼女は受け入れ、彼らと海辺で待っているとショルトが現れます。はざまの王である彼は妖精国と人間界を自由に行き来できますが、彼女と人間界に住むことはできないため数日ぶりの再会です。

ショルトの腹部の触手というおまけに以前は抵抗感があったメリーですが、彼らとも熱い時間を過ごすうちに、それもまたショルトの一部と考えられるようになってきたようです。彼も腹部のおまけがあるためにシーからは純血のシーとはみなされず疎ましく思うこともあったようですが、シーリーコートのたくらみで切り落とされてしまって初めて喪失感を覚え、失ってその価値が初めてわかったとメリーに話します。ショルトにはおまけを幻覚で隠してないものとして関係をもっていたシーの恋人は過去にいたものの、シーの女性が自分を愛してくれるとは思っても見なかったと、メリーとの関係を考える以前には自分の伴侶としてスルーアやデミフェイ、ゴブリンなどとの婚姻も真剣に検討していたようです。女神の恵みにより、いまでは自分の意思で入れ墨のようにも変化させられるようになったおまけですが、その存在を自然に受け入れ、喜んで愛を交わしてくれるメリーをショルトは王族同士の婚姻らしく相手を尊重している、大切に思っているというだけでなく、以前にもまして愛するようになったようです。メリーが愛しているわ、というとゲイレンとリースがここにいたら、自分たちが君を愛するほどには君は僕たちを愛していないと返すだろうけれど、愛している僕の女王、と話して幸せそうです。

メリーが夢をみます。そして珍しいことにその夢にはショルトも同行しています。そこはどうやらアメリカの田舎町のようですが、戦場のような危険を感じさせるような要素はなく、いまにも崩れそうで手入れのされていない農家が見えるだけです。以前女神自身が司った二人のハンドファスト結婚の印の入れ墨が具現化し、二人の手を結び合わせ、棘が肌を傷つけ血を流させます。血が滴ったところは大地が潤い、二人は警戒しながら農家へ向かいます。

人が出入りした気配のない埃の積もった家のドアをあけると、奥から猫が出てきました。数か月以上放置されていた様子のここで一匹で生き残れたわけがないので誰かに世話をされていたんだろうかと考えながら、猫の導く方向へ進むと、部屋のなかから声が聞こえ、その中にはメリーが以前戦場で癒してあげたブレナンが銃を手に立っていました。ブレナンはメリーがそこにいるのをみて驚き、これは夢だろうか、自分はどこも怪我をしていませんと言いますが、メリーはあなたが呼び出したのではないかしら、強く願っていたことは何だったのと尋ねます。

ブレナンはなかなか話そうとはしませんが、留守を預かってくれた彼の弟が嘘をついていて、4世代つづいていた実家の農家はうまくいっていると言っていたのに実際には破産してしまい、銀行に渡すしかなくなってしまったというのです。幼馴染の恋人には、自分よりもっといい人がいるから、自分はいなくなったほうがいいと伝えて、弟への当てつけに実家で自殺するつもりだったようです。ショルトとメリーが恋人は自分の実家の仕事を持っていて、彼自身高校時代はずっとそこでアルバイトさせてもらっていて、仕事を手伝ってもらいたいと言っているということを聞き出します。そして彼の弟から連絡をもらって飛んできた恋人がもしも自殺したら私が殺してやる! と家に飛び込んできます。私は退屈するのが嫌いだし、あなたじゃなくちゃといい、ブレナンは彼女と幸せになることにしたようです。

夢から覚めると、なぜ二人は呼び出されたのだろうかと話し合います。おそらくショルトが、スルーアの王である彼が、愛と結婚の神になったためだろうという結論になり、ショルト自身もその事実を面白がっています。ショルトは自分の王国に帰らなければならず、二人は名残を惜しみながら海岸を歩き、メリーに寒いだろうからとショルトが上着を貸します。上着を借りたら、帰りはひとりでもっと寒くなるとメリーが言うと、家にはほかにも上着があるからそのまま着てかえって君の匂いを上着にうつしてくれ、君が自分の服を着てくれていると思っていると嬉しいと話します。メリーはあなたがそんなにロマンチストだなんてとからかいますが、メリーを見るショルトは幸せそうです。突然銃弾が横切り、メリーはショルトに覆われて海水に沈みました。

メリーはサラエドに浜辺に引きずって行かれ、カサドゥアがショルトを連れてこようとしていますが、メリーは何かおかしいと感じていました。本当ならショルトがメリーのことを浜辺に連れて行ったはずです。FBIの護衛達もやってきています。

病院に運ばれたメリーには、ゲイレンがついています。海水で濡れてしまった衣類を着替えないと風邪をひく、と心配していますが、ショルトが着せてくれた上着だから、自分のことで周りの手をわずらわすとショルトを助けてくれる手が減ってしまうという理不尽な気持ちがわいてきて、身体に震えは走るのに論理的に考えることができません。看護婦もメリーのことを心配して、着替えなければと言ってくれ、個室を用意してくれています。フロストもやってきますが、動き出そうとしたメリーを支えようとすると、彼自身が痛みを感じているようなしぐさをみせます。ゲイレンがメリーを抱き上げ、移動させます。ドールは護衛の任務に失敗した女性の近衛兵二人をベつの場所で締め上げているようですが、自分がもしそばにいたならショルトを死なせることはなかったという自責の念もあるのではないかとゲイレンが話しています。それは違う、とメリーは言います。自分が狙われていただけで、彼は巻き込まれただけなのだからと。ショック状態のメリーを休ませるべく医師は鎮静剤を点滴にいれたようで、メリーは眠りに引き込まれていきます。

夢のなかにタラニスがやってきて、愛している、シーリーコートの女王になってくれ、メリーが自分から望んでキスをするようにと執拗にせまります。メリーと彼に呼ばれるたびに彼の魔法がかかり、彼のことを嫌う理由を忘れてしまうのですが、彼が近づくたびに、彼が昔自分を死ぬ寸前まで殴打したこと、今回は殴った上に意識のない状態で無理強いしたことを思い出し、彼への恐怖と嫌悪を思い出し、抑え込まれている状態から抵抗を続けます。タラニスは二人の服を魔法で消してみせ、自分からキスをして、シーリーコートの女王になれと命令しますが、メリーは抵抗を続けるため、おまえの護衛のショルトは簡単に殺してやったし、ドールとミストラルにも刺客を放ってやった。お前が自分からキスをするなら暗殺命令を解除してやってもいいが、抵抗するなら彼らは死ぬと脅します。メリーは自分を暗殺する試みがあった以上、ドールたちは警戒しているためやられたりしない、と彼らを信じることにします。そしてタラニスが夢の中の出来事を現実のものにできるなら、自分の魔力も現実のものにできるはずと信じて、肉のハンドパワーを呼び出し、タラニスの腕に触れると、腕の肉がひっくり返り始めます。メリー! 助けてくれ! というタラニスにNOというメリー。

メリーが目覚めると窓の付近にナイトフライヤーたちがぶら下がっていて、ああショルトが亡くなったのは夢だったのかと思うのですが、そばにいたゲイレンが「ドール、彼らをみたらメリーがどう考えるか言っただろう、すまないショルトは亡くなった」と話します。本来だったらショルトが連れてこない限り、異界には現れることができないはずの存在なのでメリーは驚きますが、ドールがキットーが鏡を通して相手を連れてこれるハンドパワーを使ってこちらの世界に連れてきたと話します。ドールに、ミストラルとあなたには危険が迫っているとタラニスの暗殺計画を伝え、ショルトを殺したのもタラニスだったと言います。

フロストの姿が見えないため、彼はどこにいるの?とメリーが聞くと彼は診察を受けているとドールが話します。ドールが犬の姿でつけてしまった傷が以前のようにすぐに治らないのは奇妙だと感じると、フロストが現れどうやら傷が感染してしまって薬を処方してもらったようです。シーは病気にはかかりませんし傷の回復にこんなに時間がかかることはありません。フロストはメリーを愛することで一部が人間となってしまったようです。どうしてこんなことになってしまったの? 私があなたを愛したことであなたを殺してしまうとメリーは嘆きます。ショルトが死んでしまったのも私のせいだわ、彼はナイトフライヤーやシーのように癒えなかったし、それは彼が私を愛していたから? ナイトフライヤーのひとりが壁からおりてきて、あれはひどい傷でした。我々ですら生き延びられなかったでしょう、ご自身を責めないでください。もしあなたの有限の命が王に影響したのだとしても、かれは人生で一番幸せだったのです、彼はあれほど若くて本当に寂しかったのです、貴女が来るまで。我々は貴女と赤ん坊たちを守ります、これが最高の王に対する我々のできる最後のご奉公ですと話します。次の王を選ぶ会議を招集したところ、ショルト王の復讐を遂げるまでは新しい王を選出しない、それまでは女王メレディスが支配者となると決議されたと伝えます。ショルトのように統治できるよう全力を尽くしますと伝えます。

海辺の現場では指紋が検出され、容疑者が確保されたようです。殺されたのはシーですが、現場は人間界なので捜査権限に関しては微妙なところですが、ナイトフライヤーの協力が見込めることになったので、メリーはシーの内輪での話として宮廷内のルールでことを収めることにします。容疑者を拷問し、暗殺計画の詳細を自白させ、これ以上の被害を避けることが目的です。ナイトフライヤーを拷問に使えば場合によって人間が狂気に陥ってしまうかもとドールが不安を口にしますが、メリーはそこまでしなくても大丈夫でしょうと言うと、ナイトフライヤーたちが無慈悲で、合理的です!とメリーに賛成します。

メリーはドールとフロストの手を握り、私のせいであなたは死んでしまう、ごめんなさい、というとフロストは微笑み、私たちは一緒に年を取ることができます、これ以上いいことがありますか?と返します。ドールは身体をかがめ、つないだ手にかがみこみます。彼は泣いていました。ふたりとも私を置いていかないでください、私には耐えられない。あなたたちが年を取っていなくなってから、あなたたちなしで残りの永遠を生きたくない。メリーたちは両腕をひろげダークネスを抱きしめ、彼が泣き止むまで抱きしめていました。


警察でショルト殺害の容疑者が勾留されている部屋は小さくて、ルーシー・テイト警部とドールたち、メリーがはいると一杯になってしまいます。トランサー卿ははじめ質問をされても傲慢な表情で相手を小ばかにした態度をみせていましたが、メリーが部屋に招き入れたナイトフライヤーたちが天井や壁にびっしりとはりつき彼らに護衛されていて、さらにナイトフライヤーたちがメリーを女王と認めたことで顔が青ざめ、さらに自分に暗殺を命じたタラニスが不妊だということが将来証明されるだけでなく、メリーのハンドパワーによって五体満足の身体ではなくなってしまい、つまり妖精王ではなくなるので、タラニスに協力しても彼の友情以外は何の見返りもないということを説明されると、彼はメリーの眼の中に彼の死を見て、メリーは彼の眼の中に彼の妻は無実で彼は妻を愛しているということを見て取ります。

トランサーの自白は警察への調書としても十分で、タラニスはシーリーコートの領土への立ち入りを禁じられました。かれは光と幻想の王ではあるけれど、メリーのハンドパワーにより彼の肘から下はねじれ続けていて、光のハンドパワーは武器としては使えなくなってしまいました。かれの腕は完璧なメリーのハンドパワーの歩く例となったので、他のシーたちも以前よりメリーを尊敬するようになるでしょう。図らずもオンディーアイスが示唆したとおりになったのです。オンディーアイスは完璧な叔母を演じ続けていたので、とうとうエイモンと共に子供たちを訪問する許可を与えました。メディアに公開したのでふるまいには気を付けていたはずですが、アラステアを抱き上げたときにみせた彼女の涙は本物でした。彼は日ごとにエスス王子に似てくるようです。

彼のフルネームはアラステア・エスス・ドルソン・ウィンター。エスス王子と彼の遺伝子上の父親のドールとフロストからとっています。ウィニー、グィネヴィア・ジョイ・テンペスト・ガーランドは見た目はリースとゲイレンにそっくりですが、彼女の魔法はミストラルそのものです。彼女のファーストネームは古いウェールズの綴りですが、リースが選びました。そしてジョイはメリーのニックネームを言い換えたもので、もしろんそれはゲイレンのアイディア。でも彼とリースはさらにガーランドを選びました。これは花輪という意味で、勝利やお祝いのときに身に着けるものでもあり、白黒映画好きのリースのジュディ・ガーランドからとったともいえるようです。ミストラルの力は風、嵐、大嵐のどれでもあって、彼がその中で一番好きな言葉をとったようです。彼らは全員一丸となって嵐の王女にどうやって力をコントロールするか教えていかないといけないでしょう。これまでのところアラステアはこのなかで一番普通の赤ちゃんに見えます。最後の赤ちゃんはティーガン・ブリー・メアリー・キャサリーン。ティーガンはショルトの父親方の祖母の名前で、ロイヤルはブリーがコーンウォール語で薔薇という意味で植物の名前をつけるのがデミフェイの伝統的な名づけなので満足しているようです。そしてメアリーというのはメリーのためで、キットーはキャサリーンという名前を娘に選びましたが、これは短縮するとキティとなって、彼自身の名前に近いからだそうです。家族はティーガンローズ、と彼女のことを呼び始めています。メーヴの息子ライアンはローズを彼のものだ、といまだに主張していてこれは彼女の魔力が彼のことを魅了した結果なのか、経過を見守っていかないといけないようです。

タラニスの空いた王座には座りたいとメリーは思っておらず、宮廷では様々なたくらみが錯綜していたようですが、結局昔ながらのやり方に戻って妖精の丘自身が王を選ぶことになり、アイスリングが彼らの土地に戻ったとたん、喜びに歌い、彼が選ばれました。タラニスは腕を治して王座への復帰を狙っているようですが、メリーは彼は自分自身をだましているのではないかと考えています。ショルトの仇として彼を殺したい気持ちはあるけれど、メリーは平和のほうを重んじるつもりです。アイスリングの即位が史上はじめてテレビ中継されますが、それをみてタラニスがどう反応するのか待ってみようということになっています。オンディーアイスはメリーとドールに退位の意向を示していますが、いまだに宮廷内での安全が信用できません。メリーはロサンジェルスを中心に広がっていく妖精の西部の土地を支配することで満足していて、いまではその土地ハリウッドは魔法だと言われるようになっています。(終)

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